可愛いとは何かを考える昭和時代の言葉の使い方

「可愛い」という言葉は、日本の文化や歴史と密接に関わっており、時代とともにその意味や使われ方が変化してきました。

現代では、可愛いは単に外見の魅力を指すだけではなく、仕草や性格、さらには雰囲気までも表す多義的な言葉となっています。

しかし、そのルーツをたどると、異なる時代ごとに可愛いという概念がどのように捉えられ、どのような言葉で表現されていたのかが見えてきます。

本稿では、昭和、大正、江戸といった日本の異なる時代における「可愛い」という言葉の使われ方や関連する表現について詳しく掘り下げます。

また、日本に限らず、中国語における「可愛い」という概念や、現代における可愛さの評価基準についても考察します。

時代ごとに異なる「可愛い」の価値観を知ることで、私たちが普段何気なく使っているこの言葉の深みを改めて理解できるかもしれません。

 

可愛いの昭和時代の言い方とは

可愛いの意味とその変遷

「可愛い」という言葉は、時代とともにその意味や使い方が変化してきました。

昭和時代には、現在の「かわいい」に加え、「いとおしい」「愛らしい」といった表現が一般的でした。

また、「キュート」や「チャーミング」といった外来語も一部で使われていました。さらに、テレビや映画の普及によって、「ロマンチック」や「スイート」などの表現も浸透していきました。

 

また、当時の少女漫画やアニメの影響で、「ふんわりした」「ほんわかした」といった表現が可愛らしさを表す際に使われるようになり、これが現代の「ゆるかわ」文化につながる要素の一つともなりました。

 

昭和の流行語と可愛いの関係

昭和時代には「べっぴん」や「おしゃれ」といった言葉が可愛らしさを表す言葉として使われました。

また、「アイドルブーム」により、「可憐」「プリティ」といった表現も広まりました。特に、アイドル文化が盛んだった1980年代には、「フレッシュ」「ポップ」といった言葉も若者の間で流行し、「可愛い」を強調する形容詞として使われることがありました。

 

さらに、昭和後期になると、雑誌や広告の影響で「ガーリー」や「スイートガール」といった表現が用いられるようになり、可愛らしさがよりファッションと結びついて認識されるようになりました。

 

大人が使う可愛いの別の言い方

昭和の大人たちは「粋」「風流」「雅やか」などの表現を用い、若者の「かわいい」という言葉とは異なる視点で美しさや愛らしさを表現していました。

また、日常会話の中では「優美」「艶やか」「凛とした」といった言葉が、特に女性の美しさを表す際に用いられることが多くありました。

一方で、家庭の中では「愛嬌がある」「可愛げがある」といった表現が、子どもや身近な人への親しみを込めた形で使われることが多く、大人が「可愛い」という言葉をそのまま使う機会は少なかったものの、代わりに「微笑ましい」「ほほえましい」といった形で情愛を示す表現が使われることもありました。

 

大正時代の可愛いに関する言葉

大正時代の流行語と可愛い

大正ロマンの時代には、「いとおしい」「愛くるしい」といった言葉が「可愛い」の代わりに使われていました。

また、モダンガール(モガ)文化の影響で、洋風の言葉も取り入れられるようになりました。この時期には、女性の装いや振る舞いが注目されることが多く、「粋」「乙女らしい」といった言葉も「可愛い」を表す形容として頻繁に用いられました。

さらに、大正デモクラシーの影響もあり、西洋文化への憧れが強まり、「エレガント」「グレースフル」といった外来語も浸透し始めました。

女性向けの雑誌や新聞では、「モダンで可愛い」という新しい価値観が広まり、ファッションや振る舞いにも影響を与えました。

 

可愛いを表現する古語

大正時代には、「めでたし」「うるわし」「をかし」などの古語が可愛らしさを表す言葉として用いられていました。

これらの言葉は、現代よりも文学的な要素を強く持ち、詩や短歌などの中で特に重宝されました。

「をかし」は特に、可愛らしさに加えて上品さや趣を感じさせる表現として、広く使われました。

また、大正時代の恋愛小説や詩の中では、「あでやか」「あいらし」などの言葉が頻繁に登場し、特に女性の可憐さや繊細さを表す言葉として浸透していました。

このような古語は、時代の流れとともに少しずつ廃れながらも、現代の文学作品や詩の中に名残をとどめています。

 

大正時代の女子が愛用した言い方

当時の若い女性たちは、「おしゃれ」「粋」「ハイカラ」といった表現を好み、洗練された可愛らしさを意識した言葉遣いをしていました。

特に「ハイカラ」は、最先端のファッションや西洋文化を積極的に取り入れる若い女性たちの間で使われ、彼女たちのライフスタイル全体を象徴する言葉でもありました。

 

また、「可愛い」を強調する言葉として、「可憐」「愛嬌たっぷり」「楚々とした」などの表現も一般的でした。

これらの言葉は、女性の可愛らしさをより繊細で優雅に表現するものとして、文学作品や日常会話の中で頻繁に使われました。

さらに、当時の雑誌では、「少女らしい無邪気な可愛さ」を強調するために、「ほほえましい」「初々しい」といった表現が見られ、これらの言葉は若い女性たちの間で流行しました。

特に、少女向けの文学作品では、これらの言葉がキャラクター描写に使われることが多く、当時の「可愛い」という概念を形成する重要な要素となっていました。

 

江戸言葉の中の可愛い表現

江戸時代に使われた可愛いの意味

江戸時代では、「可愛い」は「いとおしい」「美しい」「あいらしい」といった意味で使われていました。

特に、当時の文化や社会の価値観の中では、控えめで奥ゆかしい美しさが尊ばれ、顔立ちだけでなく仕草や立ち振る舞いも「可愛い」と評価される要素の一つでした。

また、絵画や浮世絵に描かれた女性像にも「可愛い」の要素が多く取り入れられており、江戸時代の美意識と密接に関係していました。

 

江戸時代の可愛いの評価

当時の美意識では、丸みを帯びた顔立ちや柔らかな表情が「可愛い」と評価されました。「おぼこい(幼い)」「やさしげ」といった表現も使われていました。

また、身なりがきちんとしていることや、上品で楚々とした佇まいも「可愛い」とみなされ、女性のみならず、子どもや動物に対しても同様の評価が下されていました。

さらに、歌舞伎や人形芝居の演目の中でも「可愛い」という概念が表現されており、例えば「かしらを傾ける仕草」や「小首をかしげる動作」が、可愛らしさを象徴するものとして親しまれていました。

 

江戸の流行語と現代の違い

江戸時代には「いき」「つややか」「はんなり」といった言葉が流行し、現代の「可愛い」とは異なる感覚がありました。

「いき」は、江戸の町人文化における粋な振る舞いや、しゃれた美しさを指し、「つややか」は上品で艶のある美しさを表現していました。

また、「はんなり」は京言葉に由来し、穏やかで上品な華やかさを持つ美しさを示す言葉として使われていました。

これらの言葉は現代の「可愛い」とは異なるものの、「可愛い」という概念の原型の一つとして捉えることができます。

一方で、当時の言葉の使い方には、現代の「萌え」に通じる感覚も見られ、例えば「小粋な」「なまめかしい」といった表現は、可愛さに加えて色気や風情を持つものとして用いられていました。

 

現代における可愛いの意味

2024年の可愛いについての考察

「可愛い」は現在、ファッションやキャラクター、言動に広く使われ、SNSの影響でその意味が多様化しています。

特に、インフルエンサーやYouTuber、TikTokerの影響力が増し、可愛いの概念がよりパーソナルで多様な価値観を反映するようになりました。

例えば、「カワイイ系」だけでなく、「クールカワイイ」「病みカワ」「地雷系カワイイ」といったジャンルも人気を集めています。

また、SNSの発展により、視覚的な「可愛い」だけでなく、文章表現や音声、動画など多様なメディアを通じた「可愛い」も存在感を増しています。

「ふわふわした話し方」や「絵文字の多用」なども可愛いの一種として認識されるようになりました。

 

現代女子が考える可愛い

若い世代では、「エモい」「尊い」といった新しい表現とともに、「可愛い」が感情を表す言葉としても使用されています。

特に、「推し活」文化の広がりにより、アイドルやキャラクターに対して「可愛い」がより強い感情表現として使われるようになっています。

さらに、「ゆるふわ系」や「地雷系」「量産型」といったファッションジャンルがSNS上で確立され、それぞれの可愛さの概念が独自に進化しています。

また、「ギャル系カワイイ」や「アンニュイカワイイ」など、新たなジャンルの確立も進んでおり、可愛いの概念はより多様化しています。

 

可愛いとエモいの関係

「可愛い」は単なる外見ではなく、雰囲気やストーリー性を持つものにも適用され、「エモい」との境界が曖昧になりつつあります。

「エモい」は元々、感情が揺さぶられるような美しさや懐かしさを指す言葉でしたが、近年は「可愛い」とセットで使われることが増えてきました。

例えば、手書きのノートや、レトロなカメラで撮影された写真などは「エモくて可愛い」と表現されることがあります。

これにより、可愛いという概念が単なる造形的な美しさだけでなく、雰囲気や空気感を含んだものとして捉えられるようになっています。

さらに、ファッションにおいても「エモかわいい」スタイルが登場し、懐かしさを感じさせる色合いやデザインが人気を集めています。

 

可愛いの意味と類語の解説

「かわいそう」との関連性

「かわいそう」は「可愛い」に「憐れみ」の要素が加わった言葉であり、語源的なつながりがあります。

もともと「かわいい」は「か弱い」や「かよわし」から派生し、単なる愛らしさだけでなく、守ってあげたくなるような存在に対する感情を含んでいました。

そのため、「かわいそう」は相手に対する同情や庇護の意識が強く含まれた表現へと変化しました。

また、近年では「かわいそう」が必ずしもネガティブな意味だけではなく、「健気で愛らしい」という肯定的なニュアンスを持つ場合もあり、特にフィクションのキャラクター描写などでは「守りたくなる可愛さ」として使われることがあります。

 

「美しい」との違い

「美しい」は整った形や品の良さを指し、「可愛い」は愛らしさや親しみやすさを含む点が異なります。

「美しい」は芸術的・調和的な完成度が求められるのに対し、「可愛い」はその人の仕草や雰囲気、未完成さや幼さが魅力として評価されることが多いです。

例えば、日本の伝統美においては「美しい」が格式や気品を備えたものを指すのに対し、「可愛い」は小さく親しみやすいものに対して使われる傾向があります。

加えて、現代では「可愛い」が精神的な特質としても使われることが増えており、純粋さや素直さが「可愛い」として評価されることもあります。

 

可愛いの代替表現

「愛らしい」「いとおしい」「チャーミング」「キュート」「ほほえましい」「エレガント」「麗しい」「微笑ましい」「優美な」「魅力的な」など、多様な表現があります。

それぞれ微妙にニュアンスが異なり、「愛らしい」は子供や動物など小さくてかわいいものに対して使われることが多く、「いとおしい」は愛情や感情のこもった可愛さを指すことが一般的です。

「チャーミング」や「キュート」は英語由来の言葉で、現代的で洗練された印象を伴うことがあり、ファッションやメイクの分野でも頻繁に用いられています。

一方、「微笑ましい」は可愛らしい状況や人の行動に対して使われ、ほのぼのとした雰囲気を持つ表現として親しまれています。

 

可愛いの使い方と流行語

可愛いの使い方の具体例

「この服、可愛いね!」「あの子の笑顔、可愛い!」といった日常会話で頻繁に使用されます。

さらに、食べ物やインテリア、動物などにも「可愛い」が用いられることが多く、「このカフェ、めっちゃ可愛い!」「このスイーツ、見た目が可愛すぎる!」といった表現が若者の間で流行しています。

最近では、SNS上で「映える」写真を投稿する際にも「可愛い」が評価の基準として使われています。

 

女子に人気の可愛い表現

「ゆるかわ」「ガーリー」「萌え」といった言葉が現代の「可愛い」を表現するのに人気です。

これに加えて、「地雷系」「量産型」「韓国っぽ可愛い」「アンニュイ可愛い」といった新しいトレンドも登場し、それぞれ異なるファッションやメイクのスタイルを指すようになりました。

特にSNSやファッション誌では、それぞれの「可愛い」の特徴を具体的に説明し、若者たちの流行を牽引しています。

また、表情や仕草に関する表現として、「あざと可愛い」「素朴可愛い」といった言葉も使用されるようになっています。

 

可愛いとは何かの再考

可愛いの定義は時代とともに変化し、今後も多様な解釈が生まれるでしょう。

現代では、単なる見た目の愛らしさだけでなく、「推し活」の文化が広がる中で、「尊い」「エモい」といった感情を伴う可愛さが重要視されるようになっています。

さらに、男女問わず「可愛い」が使われるシーンが増え、メンズファッションやカルチャーの中でも「カジュアル可愛い」「ストリート可愛い」といったスタイルが人気を集めています。

可愛いの概念は拡張し続け、個々の価値観やライフスタイルによって新たな意味を持つようになっています。

 

可愛いの表現と感情

可愛いと好きの関係

「可愛い」は単なる見た目ではなく、愛着や親しみを表すこともあります。

そのため、単に美的な魅力だけでなく、人間関係の中での深い感情や特定の行動、しぐさが「可愛い」と形容されることも少なくありません。

また、「好き」という感情と密接に結びついており、相手に親近感を抱いたり、大切に思ったりすることで「可愛い」と感じるケースもあります。

 

可愛いに対する感情の多様性

可愛いは、嬉しさ・愛しさ・癒しといった様々な感情と結びついています。

例えば、赤ちゃんや小動物を見ると「守ってあげたい」という気持ちが湧くことがあり、これも「可愛い」と感じる一因となります。

また、ある人の不器用な仕草や照れた表情を見て可愛いと思うこともあります。

さらに、ギャップ萌えのように、普段との違いに驚いた時にも「可愛い」と感じることがあるため、可愛さには多様な感情が含まれていると言えます。

 

可愛さを表現する言葉たち

「キュート」「ラブリー」「エレガント」といった表現が「可愛い」を補完します。

これに加えて、「愛らしい」「チャーミング」「微笑ましい」「ほのぼのする」などの表現もあり、それぞれ少しずつニュアンスが異なります。

「チャーミング」は少し大人びた魅力を持つ可愛らしさ、「微笑ましい」は温かみのある愛らしさ、「ほのぼのする」は安心感を伴う可愛らしさを指します。

また、日本独特の「萌え」や「尊い」といった表現も、可愛さを強調する言葉として使われることが増えています。

 

可愛いを評価する基準

現代における可愛いの評価

流行やSNSの影響により、「可愛い」の基準は変化しています。

可愛さは従来の幼さや愛らしさだけではなく、「あざと可愛い」「エモ可愛い」「レトロ可愛い」など、多様なスタイルが誕生しています。

また、ファッションやメイクだけでなく、話し方や仕草、ライフスタイルにも「可愛い」が反映されるようになり、評価の幅が広がっています。

 

さらに、可愛いの概念は個々の価値観によっても変化し、国や地域、世代によって異なる基準が存在しています。

例えば、日本では「ふわふわして優しい雰囲気」が可愛さとして好まれることが多いですが、海外では「自信がありカジュアルな可愛さ」が重視されることもあります。

 

可愛いを評価するランキング

SNSやメディアで「可愛いランキング」が作られるなど、可愛さの評価は多様です。

ランキングは、ファッションやアイドル、キャラクターに関するものだけでなく、「可愛い話し方ランキング」「可愛い食べ物ランキング」「ペットの可愛いしぐさランキング」など、多岐にわたります。

近年では、個人が発信するSNS投稿の影響力も大きく、フォロワー数や「いいね」の数によって可愛さが評価されることもあります。

特に、可愛い写真や動画を投稿することで「バズる」ことが、流行の指標として認識されています。

 

社会における可愛いの意味

「可愛い」は個人の好みや文化によって異なり、社会全体に影響を与える重要な概念です。

例えば、可愛いはブランド戦略としても活用され、企業のマーケティングにも取り入れられています。キャラクターグッズやデザイン、広告のビジュアルに可愛い要素を取り入れることで、より多くの人々の関心を引くことができます。

また、「可愛い」はポジティブな感情を生む要素としても重視され、心理学的な観点からも研究されています。

可愛いものを見ることで幸福感が増し、ストレスが軽減されるという効果が科学的にも証明されており、社会においてますます重要な価値を持つようになっています。

 

まとめ

本稿を通じて、「可愛い」という言葉が時代ごとにどのように変化し、どのような表現が使われてきたのかを見てきました。

昭和、大正、江戸の時代ごとに異なる美意識のもとで「可愛い」という概念は発展し、それぞれの時代背景に適した言葉として表現されてきました。

 

また、現代では可愛いの概念がますます広がり、単なる外見の魅力だけでなく、内面的な要素や仕草、さらにはライフスタイルにまで適用されるようになっています。

さらに、SNSの普及により、「可愛い」の基準は個々人の価値観や文化の違いによっても異なる多様な表現を生み出しています。

 

言葉の変遷をたどることで、私たちは「可愛い」という言葉がどれほど奥深いものであり、時代を超えて人々に愛され続けてきたかを理解することができます。

そして、これからも「可愛い」という言葉は新しい形を取りながら、時代とともに進化し続けることでしょう。

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